俺らの部署は忙しいから暇な部署(といっても数時間は残業する)に仕事を押し付けろと遠回しに言われた。上司Tいわく、あいつらは暇で、遊んでるらしい。俺は本来あるべき労働時間を遵守し本来あるべき仕事をこなしているだけのように見えるが、資本主義適応型善意欠落仕事人間とは感覚が違うらしい。仮に部署ごとに任される仕事量が違うのなら上に提訴すべきであり、俺ら末端社員や他部署で鬱憤を晴らすのは見当違いもはなはだしい。皺寄せはいつも下方にくるんだ。クソが。
そもそも上司Tは管理職だが管理をほとんどしない。端から見ていてわかるが、完全に個人プレー派の人間だからだ。情報共有しないし、全部自分でやろうとする。それでもできない分を俺らに任すわけだが、本人の考えるやり方でないと文句を言うし、その本人の考えがまとまった形でアウトプットされないからこちらはどうしようもない。いくつか選択肢を提示し、さあどうしましょうと言っても「こうすりゃ済む話だろ!」が始まってしまうので参る。お前の中にある規格が知りたい。何を優先し、何を軽視でき、何を目的としているのか…。
報連相のうち、どれを言ってもこちらにダメージの入る言葉が返ってくる。俺はもともと無口な方だが、喋ってロクなことがまずないので職場では本当に寡黙になった。本人は口が悪いという自覚がないのだろうか。他社を傷つけている自覚がないのだろうか。俺も傷つかない心を持っていたら、こいつのような悲しいモンスターになっていたのだろうか。こいつの討伐依頼をギルドに呈したい。
このワーカホリックは個人プレーをやらせたらピカイチだ。仕事はめちゃくちゃできる。なので上司Tより上の上司陣はみなこいつを信用しているし、むしろ手を出せなくなっている状況だ。たぶん俺が自殺してもこいつの昇進は抑制できないだろう。
こいつと同じ土俵、つまり仕事でこいつに勝てたらこの上なく素晴らしいことだろうと思う。しかしこいつは仕事以外のすべて(人間の心を含む)を捨てているので、こいつに勝つことは不可能であると思われる。比喩ではなく、本当に365日仕事のことを考えているだろう。
そんな奴に勝てるか? 勝てないし、こうはなりたくないという気持ちの方が強い。
じゃあこいつに勝つにはどうすればいいか。違う土俵で戦うしかない。俺は人格面ではこいつに圧勝している。というかこいつがマイナスなだけだ。仕事という媒体なしでは、こいつは全社員から嫌われていると言っても過言ではないだろう。まあこの話はいい。たぶん俺にも何か優位に立てるものがあれば、こいつもある程度はおとなしくなるのだと思う。こいつは知識、仕事の出来、コネクションで俺に圧勝している。俺がこいつより秀でている点といえば腕力くらいしかない。しかしこいつは俺が暴力をふるうとは露ほどにも考えていないので、実質無視項目として捉えているのだろう。だから殴ってみる。そしたらこいつは俺にビビる。警察を呼ぶかもしれない。ざまあみろだ。
俺の中のKICHIGAIゲージを満タンにした報いを受けて、そこではじめてこいつは自分の行いを振り返るのかもしれない。会社という場を除けば、お互い服着た猿だと考えれば、俺の方が優位にあるということに気づくのかもしれない。ああ、だめだ、また脳みそが溶けてきた。
まあ、まだゲージに余裕はある。なんとかなるうちになんとかしよう。
~おまけ~
ワシ「」キョロキョロ
T「なにしてんの?」
ワシ「○○探してます」
T「××にあるだろ! 分かんなかったら人に聞こうよ! 探している時間も給料は出てるんだよ!? ふじこふじこ!!」
ワシ「あの、○○ってどこに…」
T「まず自分で探してみようよ! なんでも人に聞くと自分で何もできなくなるよ!? 俺だって忙しいんだからさァ!! ふじこふじこ!!」
T「なんでこいつメールで報告してくるんだよ! こういうのはまず電話が礼儀だろ! じげんじげん!!」
ワシ(ヒエッ…)
T「なんでこいつ電話で報告してくるんだよ! 言った言わないになるから証拠残るようメールにしろよ! るぱんるぱん!!」
ワシ(ヒエッ…)